2014年7月3日木曜日

ドライバの数え方 ~そのIEMって何ドライバなの?~ 

ポタフェスお疲れ様でした。
ブースにお越しいただいた皆様、ありがとうございました!
小レポート(とTrioについての続報)は後日として、
最近問い合わせの多い、IEMのドライバの数え方について
すこし解説したいと思います。

カスタム、ユニバーサルIEM問わず「●ドライバ△Way」という
スペックの説明が自然に用いられるようになって久しいですね。
最近では4ドライバは当たり前、6ドライバくらいでも
珍しくはなくなってきました。

ところが、この「4ドライバ」と言った時のドライバ数と、
見た目のBAドライバの数が一致しない
は良くあります。最近の多ドライバIEM全盛時代では
特にその傾向が強いでしょう。

初めてカスタムIEMや高級ユニバーサル機を手に取った方は
「あれ? ドライバの数が合わないじゃないか?」
と思われるかもしれませんが、これには訳があります。


先日、Sonionドライバの代理店の方から
サンプルをいただきました。これを使ってドライバの数え方を解説します。
これ、筆箱のような構造になってまして、パカっとあけると・・・


上ぶたにはBAドライバが、底には1723のユニットとマイクがくっついてます。
「これだけでお酒を飲みつつずっと眺めてられるな」
と思った上級者の方はここからの解説はまったく不要なので、
以下画像を眺めながら思う存分お酒なり白米なりを食べててください。


ずらっと並んだBAドライバですが、よく見ると「Single」と「Dual」という
グループ分けがなされています。
これが、ドライバを数える際のポイントになります。
先に結論を言ってしまうと、
「Single」に分類されているドライバは「1ドライバ」として数え、
「Dual」に分類されているドライバは「2ドライバ」として数えるということです。


ちなみにこちらはSonionのカタログ。
古くはデュアルドライバ、ダブルドライバ、ツインドライバなんかの呼び名が
あったような気がしますが、
メーカーが定義した呼び名も「Single」、「Dual」なので
ここは現在では争いないところですねw

「は?メーカーじゃねぇしそんなのいちいちわかるかよ」
と思った方。大丈夫です。
それぞれ3つか4つのドライバの形を覚えるだけで
きちんとドライバの数を数えられるようになります。
では、具体的にどんなドライバがあるのでしょうか。

~シングルドライバ編 ~


さて、まずはシングルドライバから。といっても、現在使用されている
シングルBAのほとんどはSonion2300系です。


2300系は単発でツイーター(高域用ドライバ)に使われる事が多く、
3ドライバ機のツイーターはほとんどこれか、
KnowlesのED29689です。 ED29689は筐体のサイズが
2300系と同じなので、ドライバのカウントの際には
これらを混同してしまっても問題はありません。


ごくまれに2600系が使われることがあります。
Sonionの技術者曰く、本来これは
極小サイズのユニバーサル機設計のために
作られたそう。つまりはアレの中身ですねw

 ぐっと渋くなって、ウーファー(低域用ドライバ)用のシングルBA。
ウーファーはKnowlesが使われることが多いのであまり見かけませんが、
最近話題の1723Acupassはウーファーに1700系、うちのカノンは
ミッドレンジ(中域用ドライバ)に3200系(3100系と同サイズ)を使っています。
2000系と同じサイズで、同じくウーファーとして用いられる
KnowlesのCI22955というものもあります。ウチのサンカのウーファーがCIですね。
ざっと見てきましたが、2300系(ED29689)、2000系(CI22955)を
覚えておけば、ドライバ数のカウントは正確にできます。
シングルドライバは1つとして数えます!


~デュアルドライバ編~

 さて、多ドライバ機がわんさか出てる昨今、
BAドライバをカウントする際に一番重要なのは
デュアルドライバの見分けでしょう。


もはやウーファーとして定番となった、3800系。二つ開いた穴が
チャーミングです。多ドライバ系で、これが使われていないIEMを探すことの方が
困難なくらいで、6ドライバ以上のIEMにはまず間違いなく使われていると
思っていいでしょう。うちのアカラやカノンのウーファーもこれです。
まれに、KnowlesのDTEC(ベントつき)を使うモデルも
ありますが、サイズが3800系と同じなのでやはりこれも
混同してもカウントする上では問題ありません。


こちらもド定番、ミッドレンジに使われることの多い
Sonion 3300系。本当に良く使われます。


これらがデュアルドライバ、つまり二つのドライバが一つになった証ですが、
スパウト(音の出口)側から半田タップ側に入ったラインが見えると思います。
これが、2つのドライバの境目なんですね。きちんとこいつらは2ドライバです。

なぜウーファーにデュアルドライバが使われることが多いか。
いろいろ理由がありますが、低域の量感を確保するために
ドライバを2つにして出力を増やす、というのが大きな理由のひとつです。
それらが1つにまとめられるのは、実装上(シェルや筐体に詰める作業)の
都合を考えてでしょう。配線作業が単純になりますからね。
また、スパウトの数が少なくなれば、音導孔(カナル先端に開く穴)の数も
減り、より耳道の小さい人のIEM(本来は補聴器w)にも使うことができます。
ドライバの数を水増ししたいわけではなく、実装や設計の都合を
考えてこれらは1体となっており、仕事量はきっちり2倍!
機能美という言葉がぴったりな、にくいやつらです。


みんな大好きTF10とSE530.手前がTF10のウーファーで、
奥がSE530のウーファー。どちらも3300系で、
低域増量用のベントが開いています。
こいつらもデュアルドライバですね。
TF10やSE530はこれらにツイーターとして2300系が足され、
3ドライバとなっているわけです。
うちのTF10-KAIは、TF10に2300系を足して4ドライバに、
SE530-KAIは2300系を取り除いて、3300系と
シングルドライバのWBFK(後述)を2つ足すので6ドライバです。
TF10-KAIのウーファー(もともとついていた3300系)はデュアルドライバなので
見かけ上は3つのドライバに見え、
SE530-KAIはウーファーとミッドレンジがデュアルドライバなので
見かけ上は4つのドライバに見えます。

余談ですが、カスタムIEMメーカーがドライバを入れ忘れて
カタログスペックのドライバ数と一致していない、という事は
まずありえません。実装中にどうやっても気づくからです。
デュアル、シングルを踏まえれば、きちんとドライバの数は合ってるはずですよ。


 さて、こちらは2800系、ツイーター(もしくはフルレンジ)用のデュアルドライバ。
 デュアルドライバはウーファーに多かったのですが、数年前から
ツイーター用ドライバにもデュアルが増えてきました。


ツイーターのデュアルドライバといえば、Knowlesの
TWFKが定番でした。今も採用している機種は多いですね。
写真はうちのTrioで採用したDWFKと、SE530-KAIで採用したWBFK。
WBFKのほうはシングルドライバなので、二つ重ねると
スパウトが二つになってしまいます。
先ほど説明した、実装上の都合というのがなんとなく
わかると思います。二つのスパウトを1つのチューブに入れるわけですから、
結構大変です!
DWFKとTWFK(あとDFKも)は形が同じなのでやはり混同しても無問題。

これらの超小型デュアルドライバは、そもそも
極小サイズのユニバーサルIEM機設計のために作られたようです。
(すくなくともSonionの技術者はそう言っていました。)
本来はフルレンジで使うことを想定していて、TWFKなんかは
特にその傾向が強いです。あのサイズで2Wayですからね。

そんなわけで 、デュアルドライバは
2800系、3300系、3800系、TWFKの形を覚えておけば
カウントする際に間違えないでしょう。
デュアルドライバは2つとして数えます!


~おさらい・このIEMは何ドライバ?~

じゃあ、おさらいとして実際のIEMでドライバの数を数えてみましょう。

まずはうちのサンカから。


 見かけ上は3つのドライバです。
使われているのはすべてシングルドライバなので
3ドライバIEMですね。

次はアカラ。


見かけ上は2つしかドライバがありませんが、
ウーファーがデュアルドライバの3800系なので
3ドライバです。

アカラ2014とカノンではどうでしょう。

もうぱっと見で、ウーファーがデュアルドライバの3800系、
中低域がそれぞれシングルドライバ二つずつなので
合計4ドライバIEMだとわかりますね。

 ここからは他社製品。
俺は大好きUE900

こいつのツイーターはTWFK、ウーファーはDTECです。


実機とリシェル品。見かけ上は二つしかBAドライバがありませんが、
これは何ドライバIEMですか?

はい、4ドライバIEMです。

実は買ってた1964-V6s



見かけ上は3つしかBAがありませんが、これは何ドライバですか?

はい、6ドライバIEMですね。

いかがだったでしょうか。(何が
見かけ上1個のドライバを、メーカーはデュアルドライバとして
2個でカウントするのは、ドライバの数を水増ししているのではなく
きちんと実装や設計上の理由があってデュアルドライバ機を
採用しているのだということが伝われば幸いです。

TF10は3ドラ機、SE530は3ドラ機、Westone3は3ドラ、Westone4は4ドラ、
UE900は4ドラ・・・きりがないので、詳しくは84さんのBlogのBAリストでご確認を!


え、そんな見慣れたBAドライバは良いから、見切れてたドライバを見せろ?
・・・いやぁ、ほんとに好きですね~
では、そちらをごらんいただいて記事の締めにします。



  
 それでは。